毎年7月から10月にかけては日本に接近・上陸する台風が多くなり、大雨、洪水、暴風、高波、高潮などをもたらします。
それらに伴い、川の氾濫や土石流、がけ崩れ、地すべりなどが発生しやすく、人々の生活や生命が脅かされるような自然災害が度々発生しています。
このブログでは、どのような状況で土砂災害が発生するのか考えるために、台風に伴う土砂災害としては、過去最大の発生件数となった「令和元年台風第19号」と、記録的豪雨により平成最大の被害が発生した「平成30年7月豪雨」を取り上げます。
また、雨のない土砂災害のケースについても考えます。
台風での土砂災害。令和元年台風第19号(内閣府:令和元年台風第19号に伴う土砂災害の概要)
2019年台風19号により、東日本と東北地方を中心に広い地域で記録的な大雨となり、12時間降雨量は120地点、24時間降雨量は103地点で観測史上1位を記録しました。
この降雨の影響により、台風に伴う土砂災害としては、過去最大の発生件数となりました。
東日本ほぼすべてにおいて土砂災害が発生し、このうち8県において、40件以上の土砂災害が発生して被害が広範になりました。
大雨での土砂災害。平成30年7月豪雨(国土交通省:平成30年7月豪雨による被害状況等について)
本州付近に停滞する梅雨前線の活動により、各地で記録的な豪雨となりました。
この降雨により、48時間降雨量は123箇所、72時間降雨量は119箇所で観測史上1位を記録しています。
広範囲かつ長時間の降雨により、甚大な被害が発生し、平成最大の死者数になりました。
特に被害の大きかった広島県(土砂災害発生件数471件)では、過去の土砂災害と比べても、雨量に伴い土砂量が多く、それが被害を大きくする結果となりました。
どちらの土砂災害も雨量の増加に伴い、その危険性が高くなっています。
緩い斜面でも崩落(土砂災害警戒区域の指定なし)
台風19号による群馬県富岡市の土砂崩れは、土砂災害防止法の土砂災害警戒区域(急傾斜地の崩壊)に指定されない20度の緩い傾斜で発生しました。
現場から3.5kmにある雨量計では、土砂災害発生までの24時間に約400mmの猛烈な雨を観測しています。
土砂崩れの原因として、崩壊箇所に地下水が集中したこと、地元では「白ネバ」と呼ばれる地層が滑り面になったのではないかとの見方があります。
このような現象は、2018年台風21号による降雨と地震の揺れにより大規模な土砂災害が起きた北海道厚真町でも確認されています。
京都大防災研究所の釜井教授(応用地質学)によると、雨の水を含みやすい軽石が、地震の揺れによってすべりやすくなり、軽石層から上の層が流れるように崩れたとみています。
同じような土砂崩れは過去、十勝沖地震で青森県八戸市周辺や、熊本地震でも発生しており、釜井教授は「日本各地で起こりうる」と指摘しています。
このように雨が浸透し滑りやすくなった地盤は、雨が止んだ後に地すべりが起こる可能性があるため注意が必要です。
雨がなくても山崩れは起きる(雨なし土砂災害)
2018年に大分県中津市耶馬渓町金吉で11日3時40分ごろに起きた山崩れの現場を調べた国土交通省の専門家チームが記者会見し、崩れた原因について、風化して亀裂が入るなどしていた岩盤が崩壊し、表層の土砂の層もろとも崩れ落ちたとの見方を示しました。
このような雨のない土砂災害は、2013年浜松市天竜区春野町でも、雨が降っていない時に地すべりが発生しています。
この地域は「地すべり防止地域」に指定されており、住民ががけ上端の亀裂を発見したことにより自治体と国交省が連携し、地すべりが発生する直前に避難勧告を出しました。
これらの雨なし土砂災害は日本全国で発生する可能性があります。
既存のハザードマップの再点検など自治体と共に自分たちの地域のリスクをもう一度確認して下さい。