アパートの階段や通路が崩落するのは錆びが原因!?(沿岸部は特に注意)

塩害

湘南などの沿岸部では、海が見える場所でなくても塩害が起こります。なぜなら海からの塩分が風に流され、屋根や外壁などに付着して金属が錆びて住宅へ深刻な害を与えます。だいたい自転車は1年もしないうちに錆が出てきます。

沿岸部で住宅を施工するほぼすべての工務店は、この塩害による腐食を防ぐために錆にくい素材を用いることが基本となっています。

アパートの階段や通路が崩落するのは錆びが原因!?(沿岸部は特に注意)

海は見えなくても、どれくらい距離が離れれば塩害の影響を受けないのかははっきりしていません。

一般的に塩害地域の定義、商品仕様によってもまちまちです。どのメーカーも直接潮風が当たる地域では耐塩害品に仕様切り替えしています。

しかし、実際は風向きや風の強さによっても塩害が影響する範囲は変わります。また台風などの強風時では、場所によっては海岸から5㎞以上離れていたとしても塩害が生じています。

金属素材の錆

塩害の影響を最も大きく受けるのが金属素材です。住宅では、アルミサッシや屋根や外壁に使うガルバリウム鋼板は錆びにくいと言われていますが、塩害や紫外線によって表面皮膜が劣化すれば錆が発生します。

錆の厄介なところは、一度発生すると表面から見えない部分(例えば塗料の下など)でも錆は進行することです。その結果、穴あき等の腐食が起き、最悪の結果、構造体に致命的な欠陥を生じることもあります。

例えば、2020年10月に錆が原因で、アパート2階の通路が崩落し、0歳児を含む男女5人が重軽傷を負いました。同じく7年前にも海から500メートルほどの住宅で外廊下が崩落し女性が重傷を負う事故がありました。

5年に1回の点検必要
崩落事故
TB 北海道ニュース「アパート外階段が抜け落ち家族5人が転落 原因は?」

このように、海から近い市街地では潮風による塩害で建物が錆びやすいため、錆が浮いてきたら早め早めの点検が必要です。

金属以外にも影響大 塩害は金属素材だけでなく窯業系サイディングやモルタル外壁、軒天等の付帯部にも大きな影響を及ぼします。特に沿岸部は、内陸部と較べると塗膜の劣化が速く、チョーキング(触ると白い粉が出る)が見られます。塗膜が劣化して、素地が露出すれば、塩害だけでなく雨水による劣化も内部で進行します。

チョーキング

また、コンクリートも塩害で劣化します。例えば微細なひび割れから塩分が内部へと浸透すれば、鉄筋の錆びが進行して膨張し、コンクリートのひび割れや剥離を引き起こしてしまいます。

錆汁
株式会社月形「錆汁」

塩害対策の方法

こまめな水洗い

塩害の原因は、潮風によって塩分が素材に付着するからです。そのため簡単に塩害を予防する措置として有効なのが水洗いです。

沿岸部から離れた場所でも、強風後では水洗いすると効果的です。住宅では場所によっては水洗いするのが難しい部分もありますが、塗膜を傷つけないように柔らかいブラシでの清掃をお勧めします。

錆びにくい材料(塩害に強い)

そもそも錆やすい材料を使っているのであれば、塗膜による完全な保護は難しいので、根本的な対策が必要になります。特に古い住宅の場合は、錆を完全に取り除くことが難しいです。

そのため錆難い素材に交換する場合は、古い素材が新しい素材に移す「もらい錆」を防ぐことも必要です。

塩害を受けにくい外壁材として「樹脂系サイディング」があります。主な原料が塩化ビニル樹脂のためサビないのが特徴で、紫外線や雨風の耐久性も高く優秀な外壁材です。しかしコストが一般的な窯業系サイディング等よりもかなり高いのがネックです。

また、「タイル」も塩害に強い外壁材です。タイルは石や砂などの天然素材でできており、金属分を含まないため基本的に塩害の影響を受けない外壁材です。

メンテナンスをしよう

住宅を長持ちさせるためにも、メンテナンスをしっかり計画(資金計画など)すべきです。戸建て住宅のメンテナンス時期の目安を見てみましょう。

メンテナンス内容時期
外壁・屋根コーキング築6~8年
壁塗装築10~20年
外壁張り替え築30年
屋根塗装築10~20年
屋根の葺き替え築20年
根の重ね葺き築20年
雨樋交換築20年
クロスの張り替え築10年
フローリング築20年

日本の住宅の平均寿命が短い理由の一つが、メンテナンスをしないことです。長く住み続けたいと思うのであれば、概ね新築から10年サイクルでメンテナンスを考えましょう。

八王子でも階段が崩れ落ちる事故(2021/5/3更新)

築8年のアパート階段の踏み板が落ち、住人の50代女性が落下し亡くなる事故がありました。これからアパートの施工や管理に問題はなかったのかの現場検証が始まりますが、踏み板が錆びで外れるなどの事故は全国で起こっています。

この建物はまだ築8年なので、錆びで崩れ落ちたというより施工不良が原因の可能性が高いと思います。

八王子でも階段が崩れ落ちる事故
東京 八王子 アパート階段が崩れ落ち死亡 設計と異なる工事か

NHKの報道によると、鉄製の階段と木製の踊り場をつなぐ部分の木材が腐食と、防水加工がされていなかったというニュースが報道されています。設計段階では接続部分にも鉄を使うことになっており、木材の使用は想定されていなかったうえ、計画変更の届け出もなかったとのこと。

このように当初の設計と異なる工事を行う場合、検査機関などに変更の届け出を行うことが法律で義務づけられています。

関係者によると、こうした届け出はなく、建築士事務所は警視庁に対し「事故が起きて初めて木材が使われていることを知った」と説明しているということです。

屋外階段の構造について定めた建築基準法施行令121条の2は、「直通階段で屋外に設けるものは、木造(準耐火構造のうち有効な防腐措置を講じたものを除く)としてはならない」などと規定しています。

このアパートの階段がこうした規定に該当し、適切に木材を使用していなかった場合、建築基準法違反と判断される可能性があります。

しかしながら築年数の古い建物では、メンテナンスがされていないものが多くあり、同じような事故が起こる可能性があります。過去には階段だけでなく、アパートの階段の壁が崩れて、それによって怪我をするケースもありました。

いずれにせよ、経年劣化も考慮した、仕様の選定を行い、確実に施工してメンテナンスもしっかりするしか、このような事故を防ぐ手段はありません。

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