土砂災害から身を守るために知っておくこと。逗子の斜面崩壊から学ぶ。

土砂災害ハザードマップ

がけ崩れや土石流、地すべりなどによる土砂災害は一瞬にして、人命や家屋などの貴重な財産を奪うなど、甚大な被害をもたらします。

国土交通省では毎年、土砂災害の発生件数を集計しています。

土砂災害発生件数の推移
資料:国土交通省

土砂災害発生件数をみると、平均して1年間におよそ1,081件もの土砂災害が発生しています。さらにほとんどの都道府県で土砂災害が発生しています。

土砂災害の被害を防ぐためには、一人ひとりが土砂災害から身を守れるように備えておくことが重要です。そのために知っておくべきポイントを紹介します。

土砂災害から身を守るために知っておくこと。逗子の斜面崩壊から学ぶ。

土砂災害のおそれのある場所は「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」と「土砂災害危険箇所(レッドゾーン)」として指定されています。

このイエローとレッドゾーンの違いが以下の図が参考になります。

警戒区域、特別警戒区域の指定範囲
東京都建設局:警戒区域・特別警戒区域の指定範囲(イメージ)

まずは、これから住むところ、自分の家がこれらの土砂災害のおそれがあるかどうか、土砂災害ハザードマップで確認します。

表示する情報で土砂災害を選び住所を入力、もしくはお住まいの地域に拡大します。

土砂災害ハザードマップ

色の付いたところをクリックすると説明があります。ここは「急傾斜地の崩壊警戒区域」となっています。

土砂災害には、主に「がけ崩れ」「地すべり」「土石流」の3つの種類があり、これらが発生するときには、何らかの前兆現象が現れることがあります。

主な前兆現象

特徴

主な前兆現象

がけ崩れ

斜面の地表に近い部分が、雨水の浸透や地震等でゆるみ、突然、崩れ落ちる現象。崩れ落ちるまでの時間がごく短いため、人家の近くでは逃げ遅れも発生し、人命を奪うことが多い。

がけにひび割れができる

小石がパラパラと落ちてくる

がけから水が湧き出る

湧き水が止まる・濁る

地鳴りがする

地すべり

斜面の一部あるいは全部が地下水の影響と重力によってゆっくりと斜面下方に移動する現象。土塊の移動量が大きいため甚大な被害が発生。

地面がひび割れ・陥没

がけや斜面から水が噴き出す

井戸や沢の水が濁る

地鳴り・山鳴りがする

樹木が傾く

亀裂や段差が発生

 

土石流

山腹や川底の石、土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に下流へと押し流される現象。時速20~40kmという速度で一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させてしまうことも。

山鳴りがする

急に川の水が濁り、流木が混ざり始める

腐った土の匂いがする

降雨が続くのに川の水位が下がる

立木が裂ける音や石がぶつかり合う音が聞こえる

イラスト:NPO法人土砂災害防止広報センター

より詳しくは、各都道府県、市町村の土砂災害等ハザードマップをご確認ください。

東京都土砂災害警戒区域等マップ:http://www2.sabomap.jp/tokyo/

神奈川県土砂災害情報ポータル:http://dosyasaigai.pref.kanagawa.jp/website/kanagawa/gis/index.html

逗子市土砂災害等ハザードマップ:https://www.city.zushi.kanagawa.jp/syokan/bousai/dosya.html

災害はいつ起こるか分かりません。災害が発生しても落ち着いて行動が取れるように、一人ひとりが日頃から備えておくことが大切です。

土砂災害は大雨の後に起こるとは限らない

2020年2月、神奈川県逗子市池子2丁目に建つマンションの東側斜面が崩壊し、前面の市道を通行していた18歳の女子高校生が土砂に巻き込まれて死亡しました。

写真:令和2年2月5日神奈川県逗子市で発生した土砂災害の調査結果より
google mapより

土砂崩れが発生したのは幅8mの市道に面する高さ約15mの急斜面です。斜面の上に建つマンションの敷地に含まれる土地で、住民の管理組合が管理しています。

県は2011年にこの斜面を「土砂災害警戒区域」(イエローゾーン)に指定していました。しかし、ここはマンションの土地(民有地)のため行政による直接管理はできていません。

この斜面は市道から約7mの高さまで石積みの擁壁で補強し、擁壁の上は約8mの高さまで土砂があり、草や木が表層を覆っていました。

土砂災害は、地中にたくさんの雨が貯まったところに強い雨が降ると発生しやすくなるという特徴があります。しかし、崩落は水による流動ではなく、乾湿、低温等による風化からの崩落という見方を示しています(国土交通省の調査結果より)。

民法上の管理責任はマンションの区分所有者にある

2015年9月の記録的な豪雨で、栃木県鹿沼市では土砂崩れが起き、1人が亡くなりました。逗子と同じく、私有地だったため対策が進んでいませんでした。また、2014年にも石川県羽咋市の私有地で土砂崩れが起き1人が亡くなっています。

対策を講じる場合には土地の所有者が行うのが原則です。管理に瑕疵があると所有者が無過失で責任を負うということに民法上はなっています。

私有地で発生した災害事案により第三者に損害を与えてしまった場合には、土地所有者に賠償責任が発生します。(民法第717条)

その場合には、土地所有者が賠償金を被害者に支払うことになります。(民法第417条)

土砂災害の危険がある場所の多くは私有地のため、行政が対策を行う場合には用地の買収などが必要で、時間と費用が掛かります。

このような理由で、私有地の土砂災害対策が進まないなか、土地の所有者が土砂災害対策を講じた場合に補助金を出す自治体もあります。行政と住民の協力で私有地への対策が広がることを願っています。

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