雪の被害(雪害)の代表的なものとして、雪崩、除雪中の転落、路面凍結での交通事故や転倒事故などがあります。
日本は国土の半分が豪雪地帯で、日本海側に特別豪雪地帯が数多くあります。
近年では、急な積雪により、除雪が間に合わず建物に被害が生じたり、スタッドレスタイヤの未装着で走行が困難になることや、路面の凍結や視程障害(吹雪等による視界不良)による事故が多発しています。
雪害に遭わないためにも、特に建物の雪に対する正しい知識を学びましょう。
雪の重みで建物が潰れる!?
建物を設計する時には、もちろん地震や風と同様に積雪についても考慮しています。
建築基準法施行令では「多雪区域」というものが定められていて、その名の通り「雪が多い区域」のことです。これは特定行政庁が定める設計用の垂直積雪量が 1 メートル以上の区域を指すものとされています。
この積雪量については、全国 423 地点で収集された過去15~68年間分の積雪深のデータから、国土交通大臣が定める方法により算定した垂直積雪量に基づいて、特定行政庁が規則で定めています。
例えば東京都内だと30cmの積雪量、八王子の方にいくと40cmと定められています。
建物を構造計算するときには、積雪荷重については、積雪量1cm ごとに1m2あたり20N(約2kg)となるので、30cm×2kg=60kgの重さが1m2に載ることを想定します。
このように積雪による建物の安全性を確認するようになっていますが、平成26年2月の関東甲信地方を中心とした大雪では,直後に雨が降ったことで,体育館等の勾配の緩い大きな屋根の崩落などの被害が発生しています。
このように屋根などに積もった雪が雨により重みを増し、建築物に大きな負担がかかり危険性が増します。水 ( 雨 ) の比重は 1 なので、高さ1cm ごとに 1m2につき100Nになるので、雪の5倍の重さが載ることになります。
これらを受けて、一定規模以上の緩勾配屋根については,積雪後に雨が降ることも考慮して建築基準法における積雪荷重の強化(平成30年1月15日に改正告示を公布)がされています。
積雪による屋根崩落被害のあった地域
2014年2月14日夜~15日、関東甲信地方で、数百年に1回の記録的な大雪なり、群馬県、埼玉県、東京都等では、降雪後に降雨が重なることで、体育館等の屋根全体の崩壊の被害が集中しました。
また、カーポート、アーケード等に被害が集中し、カーポート崩落の下敷きにより、死亡2名、重傷3名となりました。
この平成26年2月豪雪では、住宅647棟(全壊16棟、半壊46棟、一部損壊585 棟)、非住宅 388 棟の被害となりました。また、屋根から落ちた雪で窓ガラスが割れる被害も多発しています。
建物被害対策について
国が発表した「建築物の雪害対策について報告書」にある被害要因をまとめると以下になっています。
特に注意が必要な建築物は
としています。この中で対策が難しいのが「老朽化した木造住宅など」です。
雪国北海道でも倒壊事故が急増
雪下ろしの慣習がある地域では、積雪量を低減して、設計を行うことが可能になっています。
しかし、急な積雪により雪下ろしが間に合わなかったり、空き家で雪下ろしする人がいない、住民の高齢化で雪下ろしができないなどの課題が生じています。
例えば、2011年旭川市では2月23日夜、木造3階建ての集合住宅兼店舗の屋根が崩落しました。さらに、岩見沢市では2月19日未明、空き倉庫が雪の重みで倒壊しています。
北海道内で倒壊したり一部損壊したりした建物は、少なくとも約50棟に上り、昨冬の4倍となりました。
こうした状況を踏まえ、例えば滝川市は「空き家等の適正管理に関する条例」を施行し、危険な空き家があれば、雪下ろしなどの対策を講じるよう所有者に命令、従わなければ、市が建物を撤去するなどして、所有者に費用を求めることとしています。
しかし、所有者が不明な建物や、税負担の反対など対策が難しい側面があります。