倉庫火災の原因とは?

火災被害

21日午前8時前、宇都宮市の平出工業団地の「久和物流平出物流センター」から「炎と煙が出ている」と消防に通報があり、夕方にはほぼ消し止められました。

記憶に新しいところでは、消し止めるのに10日以上を要した2017年の当時アスクルが運営していた物流センターからの出火がありました。

このように可燃物を多く収めている倉庫の火災リスクがあり、どのような特徴があるのかを考えてみましょう。

倉庫火災の原因とは?

東京での倉庫火災

東京消防庁の調査結果によると、2019年に同庁管内で発生した倉庫火災は15件となっています。死者も3名発生しており、損害額が最近10年間で最も多い金額になっています。

年別火災状況
表:東京消防庁「令和2年版 火災の実態

出火原因は電気設備機器が8件と最も多くなっています。

出荷原因と出荷箇所
表:東京消防庁「令和2年版 火災の実態

倉庫出火の原因

倉庫出火の問題は、商品や資材など可燃物が大量に保管されており、かつ無人となることが多いので、火災時に火煙が建物外に噴出するまで発見されず、延焼拡大しやすい危険性があります。

ここでとりあげる「延焼拡大」とは、火元が建物の火災のうち部分焼以上に延焼拡大した火災をいいます。

延焼拡大率
表:東京消防庁「令和2年版 火災の実態

また、倉庫出火だけではなく、全体の出火要因でも電気設備機器による火災が多い点から、定期的な点検・交換による適切なメンテナンスの必要性は指摘されています。

電気設備の出荷原因
表:東京消防庁「令和2年版 火災の実態

倉庫出火の事例(なぜ大規模な火災が発生したのか)

2017年2月の当時アスクルが運営していた物流センターからの出火の事例から、なぜこのような大規模な火災が発生したのか見てみましょう。

アスクルの物流センター
写真:産経ニュース「アスクル子会社を不起訴 さいたま地検」より
火災の概要
表:早稲田大学長谷見教授「大規模物流倉庫火災から考える巨大施設の災害脆弱性」より

アスクルの倉庫では、多種多様な通販商品をメーカーから搬入し、個別の注文に応じてダンボールに詰めて発送していました。各階2万㎡を超える大空間に商品が並べており、防火シャッターによって火災が拡がるのを防ぐ防火区画がされていました。

出火したのは1階で廃ダンボールを処理搬出する端材処理室で、2階倉庫に直接、延焼したため、焼損は2階、3階の倉庫部分に集中しました。

防火シャッターは、計133カ所の約2/3、88カ所が正常に作動しませんでした。

その中には、商品を運ぶベルトコンベヤによる閉鎖障害が確認されています。

防火シャッターの閉鎖障害
写真:早稲田大学長谷見教授「大規模物流倉庫火災から考える巨大施設の災害脆弱性」より

また、作動しなかった防火シャッターは、火災拡大が急激で、防火シャッター降下信号を出す前に感知器の配線がショートしたことが推測されています。

その他にも、出火して急激に延焼したのは人目につかない端材処理室で、業務も委託されていた。危険はそういう場所に集中しがちだが、概して基準が未整備で管理の目も行き届かない。屋外消火栓の初期消化の操作ミス、119番の遅れ(火災覚知から7分後)などが原因として挙げられています。

これらから消防庁は以下の教訓を挙げていますが、まとめると、物流倉庫に限らず、どこにでもありそうな言い古されたことかもしれません。

①火災発見時は直ちに適切な通報

②屋内消火栓設備又は屋外消火栓設備を用いた確実な初期消火

③従業員全員が円滑に避難できることを確認する避難訓練

④防火シャッターの下に物を置かない

⑤感知器と防火シャッターの正常稼働の確認

⑥設備機器の維持管理

しかしながら、このような火災は、施設が巨大化したり高度化したりすると、上に挙げたような単純なことを徹底させるのが如何に難しくなることを示しています。

タイトルとURLをコピーしました